青色申告について

名人伝

名人伝(一部抜粋)

邯鄲の都に住む紀昌という男が、天下第一の弓の名人になろうと志を立てた。己の師と頼むべき人物を物色するに、当今弓矢をとっては、名手・飛衛に及ぶ者があろうとは思われぬ。百歩を隔てて柳葉を射るに百発百中するという達人だそうである。

 

中島敦の名人伝の書き出しである。

 

先ず、師の飛衛は瞬かざることを学べと命じる。紀昌は妻の機織の下にもぐり込み二年を経た。夜熟睡している時でもクワッと大きく見開かれたままである。小さな一匹の蜘蛛が睫毛と睫毛の間に巣をかけるに及んで、師の飛衛にこれを告げる。瞬かざるのみではいまだ射を授けるには足りぬ。次には見ることを学べ、小を見るに大の如く、微を見ること著の如くなったならば、来って我に告げるがよい。紀昌は虱を窓に吊るし眺め暮らす中に三年が経った。このとき窓の虱が馬のように見えていた。「でかしたぞ」師が褒め射術の奥義伝授が始まった。目の基礎訓練に5年もかけた甲斐があって腕前の上達は驚くほど速い。10日の後には百歩を隔てて柳葉を射るに百発百中・・・

 

というお話ご存知の方も多いと思いますが、この話の教えるところはいろいろあります。さて、これから「易しい簿記の本」を読んで、さて記帳を始めようとしても実際には複式簿記にはなりません。易しい言葉と簡易に解説がしてはあるでしょうが、複式簿記の中身は易しくないからです。いかに名人に教えてもらったとしても知識だけでは、百歩を隔てて柳葉を射るのが易しくないのと同じです。そこで、視点を変えて、簿記を勉強するのは次節のお楽しみとし、先ず何をすれば、複式簿記は簡単なのかを述べて見ます。それは、次のような環境整備なのです。これが済めば百歩を隔てての柳葉に百発百中間違いありません。紀昌の5年に及ぶ目の訓練から見れば、何もしないのと同じくらい簡単です。

 

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