事務所からのお知らせ

台湾現地視察へ行って来ました。(2013/10/5~10/7)

お知らせ

全国農業経営コンサルタント協会の、海外視察にて、台湾へ行ってきました。 視察で訪れた先を一部ご紹介します。

 

新竹縣關西農會(新竹關西鎮)

仙草加工場、農特産物マーケティングについて視察しました。視察した日は休日でしたので、加工場の一部がお休みでした。

ここの加工場で取り扱われている仙草とはシソ科の一種で、中国の本草学の基本書とされる『本草網目』に中薬材料の一種として記載されており、昔から暑気を払い、熱毒・疲労を取り除く効果があると親しまれてきました。健康志向が強い現代の台湾では、仙草は再認識され、料理に用いるレストランが増えてきています。

 

また、仙草パウダーは化学成分を添加せず作られており、そのままお茶やゼリー、デザートなど様々な用途で使えるようになっています。二日酔い・夏バテ解消、解毒、お通じが良くなる、高血圧糖尿病の方、リウマチがしんどい方、肌荒れが気になる方になどいずれにも効果があり、お勧めだそうです。   また、伺った關西鎮は「仙草の故郷」と呼ばれ、昔から仙草を生産しており、仙草生産地としても名高い地域です。なお、仙草は中国から伝わってきたのではなく、新竹關西鎮の原住民、アミ族が作っていた薬草です。

 

農會は、農家が作った仙草を仕入れ、加工し、販売します。仕入れた仙草を濃縮して5時間煮込んで乾燥させ、液体を粉末にします。現場には翌日煮る予定の、濃縮後の仙草が置いてありました。残った絞りカスは農家が運んで有機肥料にします。 農家は、生の仙草を収穫し、3日間干して、3カ月~1年くらい東北風に当て、乾燥させたものを農會へ出荷します。農會は日本でいう農協の様なものです。収穫物は1キロ75元台湾ドルで買い取られます。日本円に換算すると約3倍なので、230円くらいです。 1ha当たりの田から6,000キロの仙草ができます。米やお茶など他の作物よりは、収入が良いとのことです。

 

粉末より加工されたゼリーやお茶などは様々な場所で販売されています。ここはシェアの8割を占めています。このような農會見学をする団体が多くいるのですが、伺った日は台風の影響でキャンセルが多くあったとのことでした。

 

仙草は、連作に向かず、輪作をしなければいけないとのことで、ベストはお茶作か稲作がいいそうです。また、山の麓では、トウモロコシやイチゴと輪作しているそうです。 生産するにあたっては、農家ごとに持っている土地で回し、農地の計画はある程度話し合いで決め作ります。農地は傾斜が多く、面積が広い場所は無いとのことです。これまでの主流は稲作だったのですが、米の値段より仙草の値段が上昇した為、仙草を作る農家が増え、仙草作りがメインとなっています。 農會は仙草作りの指導を無料で行い、生産に必要な肥料や農薬を全て販売しており、農會のメンバーだと、それらを安く購入することができます。また品質向上のために、プロに依頼して品質改良も行っています。更に、こちらの農會では直売所を併設しており、野菜の委託販売も行っていました。

 

 

傑農合作農場(台中)

傑農合作農場は、この地域に住み、一貫理想を保有している農民を結集して、生産技術の向上と収益を高めることを目的として設立されました。また、国際貿易自由化の波に対応するため、農家企業化経営を実施し、流通経路の多角化を図り、国際化へ邁進しています。 最近では、各方面の流通や設備を通じ、その他の地区で農産物生産に従事している農民団体と相互協力して、産地策略聯盟を構成し、国内農産物流通システムの確立を目指しており、山梨から梨を青森からりんごを輸入しています。また、1995年、会員の要望で日本から高品質の梨穂木を輸入し始めました。 現在の穂木輸入先は福岡、鳥取、新潟、長野、福島などだそうです。輸出は主に、夏はマンゴー、冬はポンカン、ブドウなどですが、最近はドラゴンフルーツやパイナップルの輸出が増えたそうです。1983年より検疫が必要になり、虫がフルーツの中に卵を産んでしまうので、フルーツによっては殺虫処理が必要になりました。検疫は、台湾と日本の検疫官両者がチェックします。

 

ブドウ検疫の流れは、冷蔵処理から始まり冷蔵庫を1℃に維持して12日間保ち、12日間経つと、虫の生死そ確認し、見栄えの認定をされます。まだ虫がフルーツの中に入っていれば、48時間そのままにしてチェックをし、幼虫が入っていたら3時間~12時間後に死んでいるかどうか確認をします。 その後、選別、包装し、温度計で温度を測り、クリアした物に検疫ラベルを張り付け、コンテナの中に入れ、輸出します。柑桔及び白柚の検疫の流れはブドウとほぼ一緒で、冷蔵処理の日数が少し伸び14日だそうです。ブドウは包装してから低温処理しますが、柑桔及び白柚は低温処理をしてから包装後、箱詰めをし、検疫標準ラベルを張り付け、コンテナの中に積み出し輸出します。

 

マンゴーの検疫の流れは、先の果物と違い、品質管理もしています。選んで不良品は除きます。温度計を挿したまま熱くして、46.5℃にし、30分間維持します。これをしないと殺菌効果がないとの事でした。46.5℃というのは、フルーツを傷めずに卵が死ぬ温度だそうです。 それ以上にするとフルーツがダメになってしまいます。熱くする方法は水蒸気です。以上は全て見栄えの処理です。マンゴーは、低温処理ではダメになります。また、斑点病でダメになるのが一番多いです。包装してから検疫する、もしくは、検疫してから包装するかで輸出します。

 

ライチの検疫は、今まで以上に手間が掛かり、低温処理、高温処理の両方が必要になります。流れは、蒸して高温処理してから、42時間冷蔵処理をします。なお、他の国では高温処理か低温処理のどちらかしか行っていないそうで、以前より日本の検疫官からは「殺菌効果があり、見た目が良い」と言われているそうです。 また、他国はどちらかしか行っていないので、どちらかでも良いのではないか、と思われますが、改めでどちらか一方ですることとなると、再申請する必要があり、申請するにも時間と手間が掛かってしまうので、昔のままのやり方で行っているそうです。ライチは台湾の市場では枝付きのまま販売されていますが、輸出の際は重量を減らし運賃を安く済ませる意味も含め、枝を全て切り輸出しています。

 

パイナップルは検疫の必要がないそうです。

 

この合作農場の場員は420人おり、そのなかに1班14人編成の班が、2班あります。この班は実際に活動する人達の班です。輸出は、一定の量があり、値段は安定しています。国内は、値段の高低があり変動します。輸出する際、こちらが見積もりをだして、取引側がリアクションし、高いと言われたら輸出する量が減ります。なお、輸出ギリギリに値段が分かります。 また、60%~70%は日本へ輸出しており、日本向けだけではなく、オーストラリア、シンガポールや中国にも輸出しています。現在日本への輸出割合が少し下がっている為、中国を狙っているそうです。品質よりも安く、安く、と言ってくるのが中国の特徴です。自社栽培は行っておらず、農家に肥料・農薬・栽培の仕方など全て指導しています。農會と基本的には同じ様です。 農會は規模が大きい国の企業。合作農場は規模が小さい民間の企業。ですので、活動はし易いそうです。また農會と違う点は、合作農場には金融機関が無いことです。こちらの合作農場は国から補助金を貰っているものの、あくまでも政府の協力をするといった立場なので額は少ないとのこと。農會は国の企業ですから補助金の額も多く、政府の力も強い様です。

 

この農場は現在2代目。先代が友人と一緒に立ち上げた会社です。場員420人のうち5人の理事が選ばれます。日本の売り先は主に貿易会社。その貿易会社はスーパーや量販店へ販売しています。数件、貿易会社を通してお客様へ直接送られることも。また、JTBの観光客が来て、マンゴーが欲しいと言われたら直接送ることもあるそうです。

 

台湾には法人税と似たような利益に対して支払う税金、営業税というものがあります。農家が合作農場に対して農産物を売る分には、税金は掛かりません。農民は農業に関する全ての税金が免税だからです。それは、農家減少の防止と保護のためで、昔から免除されています。また、420人の場員が売る先は、ここの合作農場だけではなく、あちこちに出荷しています。 基本的には、値段が良ければどこにでも出荷する様です。また、この農場の場員の農産物の品質は、他所よりも良く、良い農家を農會と取り合うような競争相手になるそうです。こちらの施設の冷蔵庫がある面積は300坪だそうです。また、300坪のうち200坪は低温検疫処理施設冷蔵庫で、とても広いです。 視察日はあいにくの雨で圃場見学は出来ませんでしたが、近くには果物を生産している畑が多くあり、梨の接ぎ木を見る事ができました。

 

 

市内レストランにて夕食をとりながら、森先生の義理の弟様のお話を伺いました。

主に果物の輸入販売を行っているとの事でした。いろいろとお話を伺いながら、台湾料理を一緒に頂きました。食事をしている隣では披露宴を行っており、とても賑やかでした。台湾式の披露宴は大分ラフな装いでした。

 

今は結婚式シーズンと聞きました。一日目の夕食後出歩いた際、結婚式関係のお店は夜遅くまで沢山の客で賑わっていたので、なぜかと不思議に思いましたが、ようやく理解できました。

 

地下鉄、夜市

二日目の夕食後時間が空いたので、渡辺先生を筆頭に地下鉄で士林夜市へ出かけました。台湾の地下鉄は、コインが切符代わりでした。台北から夜市までの地下鉄は淡水線です。5駅間の乗車で20元でした。日本円では約60円なので安いと感じました。 夜市は多くの人で賑わっていました。台湾では宵っ張り(夜ふかしをする人)を夜猫族(イェマオズゥ)と呼ぶそうです。皆なかなか眠ろうとはせず、夜市へ繰り出す人が多いようです。また、最近では外食が流行っているそうです。毎晩7時頃から賑わい始め、10時から深夜1時頃がピークだそうです。龍眼という果物を始めて食べたのですが、ライチの様で美味しかったです。ゲテモノを探してみたのですが、巡り合えず残念でした。

 

大潤發量販店視察(中崙店)

最後に台湾の庶民派スーパーを視察しに行きました。入って直ぐ人用の普通のエスカレーターの隣に、見慣れないエスカレーターを発見しました。それは、カート専用のエスカレーターでした。しかもこのカートは有料で10元を入れないと連結キーを解除する事が出来ません。なお、使い終えた後には返金されます。盗難防止も兼ねているのでしょうか? これは便利そうですね。このスーパーは、家電や生活用品も多く取り揃えられていて、日本のイオンやイトーヨーカドーの様なものでした。

 

検疫について

台湾から日本への輸出入する際は、検疫が必要となります。なぜ検疫が必要なのか。それは、海外から持ち込まれた、もしくは海外へ持ち出す動物・植物・食品などが、病原体や有害物質に汚染されていないか確認する作業で、それらが付着して日本へ侵入し被害を受けるのを防ぐために行っています。最近では外来種を水際で防止するために必要な対策となっています。 また、日本は島国な上に、江戸時代の鎖国政策により物の輸出入が制限された為、世界に沢山存在する家畜の伝染病や農作物の病害虫の侵入を長年拒んできましたが、輸出入が盛んになった明治以降、日本には存在しない伝染病や病害虫が侵入し多くの被害が発生しました。そこで、それを防ぐために課せられたのが動物検疫と植物検疫です。旅行者が動物の伝染病や植物の病害虫を媒介してしまう恐れがあること、検疫とは、それらが日本に入るのを防ぐための重要な検査であります。

 

日本に於いては、外国から植物を持ち込む、若しくは、輸入する場合には、すべて植物検疫が必要です。植物検疫とは、外国から侵入しようとする病害虫から日本の「緑」と「農作物」を守るために行っているものであり、万が一、病害虫が侵入すると取り返しのつかない被害を与える事があります。 その植物類は、日本に持ち込めない「輸入禁止品」(我が国の農作物に大きな被害を与える恐れのある検疫病害虫が我が国に侵入する事を防ぐため、その病害虫の寄主となる植物や、病害虫、土は輸入が禁止とされています。)と、検査を受けて合格すれば持ち込める「輸入検査品」(輸入禁止品に該当しない植物で、検疫病害虫付着の有無の検査や検疫条件の確認などを受けなければならないもの。)の2つに区分されています。

 

輸入植物類に病害虫が付着して日本に侵入するのを防ぐ事が目的の輸入植物検疫では、病害虫が付着する可能性のある植物は全て検査の対象となりますが、家具や製茶のように高度に加工された物、瓶詰めされた乾燥香辛料や缶詰などで密閉されているものなど、植物検疫の対象となる植物の病害虫が付着する恐れがない植物又は、植物加工品等は輸入植物検疫の対象となりません。

            

なお、国内でも南西諸島(沖縄県・鹿児島県の奄美群島)、東京都の小笠原諸島には、国内の他の地域に発生していないアリモドキゾウムシ、アフリカマイマイ等の農作物に大きな影響を与える病害虫が発生している為、これらの病害虫を発生していない地域にまん延させないために、これらの病害虫及び寄主植物などの移動を規制しています。主な移動規制植物には、サツマイモ(紅芋等)、ヨウサイ(ウンチェーバー)、アサガオ、グンバイヒルガオ等の生茎葉及び地下部などがあります。

 

      

アリモドキゾウムシ。アリモドキゾウムシ(幼虫)によるサツマイモの被害。体長6~7mm。熱帯、亜熱帯を中心に世界各地のサツマイモ栽培地域にいるサツマイモの害虫です。日本ではトカラ列島(鹿児島県)以南の南西諸島(久米島等を除く)と小笠原諸島(東京都)で発生が確認されています。サツマイモが幼虫に食害されると、異臭と苦みが出て、食用はもちろんのこと、飼料としても用いることができなくなります。

 

アフリカマイマイ。体長、殻高10cm(成貝)。熱帯・亜熱帯地方に分布している大型のカタツムリで、日本では小笠原諸島(東京都)と奄美群島(鹿児島県)以南の南西諸島で発見が確認されています。野菜類をはじめ多くの農作物を食害し、著しい被害を与える農業害虫です。 先程ご紹介した視察先でも、果物を輸出している方がいましたが、マンゴー・パパイヤといったような熱帯地域の果物を他国へ輸出する際には、各国の厳重な植物検疫検査を行わなければいけません。なぜこういったものが持ち込みの規制になるかというと、東南アジアには“ミカンコバエ”や“ウリミバエ”という日本にはいない害虫がいて、それらは果物内部に卵を産み繁殖する性質があり、もし検疫を抜け国内に侵入してしまったら、我が国の農作物に大きな被害を与える恐れがある為です。そのためマンゴー・パパイヤなどを熱帯地域から他国の未発生地域に持ち込む際にウリミバエ・ミカンコミバエなどの発生がない事を厳しく検査する事が義務付けられています。 例外的に、パイナップル、ドリアン、ココナッツなどの果物は、果物の中へ卵を産まない為、持ち込みが可能であり、台湾での輸出検疫が必要ではありません。しかし、入国時の税関検査の前に輸入検査を受ける必要があります。空港・港の植物検疫カウンターで検査を受けて合格すれば持ち込む事が可能です。

 

 

以上、輸出入・検疫等につきましては、農林水産省のホームページに詳しく記載されておりますので参考になさって下さい。

 

           

今回、私は初めて海外視察へ行ったのですが、農協観光のガイドさん、通訳ガイドの黄さんと、ガイドさんにとても恵まれ、素晴らしい視察が出来ました。 言葉が違うと表現も違い、会話をする事はなかなか難しいかと思っていましたが、町を歩き、店に入ると、以外にも、日本語を話せる方が多く、片言の英語や、身振り手振りだけでも、何となく察して案内して下さる方もいて、驚きました。 また機会があれば外国の文化に触れながら、その地域毎の農業を知り、当事務所の関与先様のお役に立つ情報を発信したいと考えております。なお、記事の中ではご紹介しきれていない視察先が御座いますので、追ってご紹介出来ればと思います。3日間大変お世話になりました。ありがとうございました。

        

平成25年10月5・6・7日 高坂 桃代