事務所からのお知らせ

和歌山現地視察へ行って来ました。(2013/7/11~7/13)

お知らせ

全国農業経営コンサルタント協会の毎年恒例行事、現地視察へ行ってきました。
今年は和歌山県でした。視察で訪れた先をご紹介します。

 

めっけもん広場(紀の川市)

JA紀の里が運営する日本最大級の販売高を誇る農産物直売所です。1年を通じて多品種の果物が収穫される紀の川市に位置し、大阪府など県外からのお客様が過半数を占め、10年以上日本一の売上を続け、全国の大型直売所の先駆けとなった直売所でもあります。“めっけもん”とはどういった由来なのか。それは、「とれとれ野菜たちがみずみずしく、しかも安く手に入れられる場所なんてここしかない!!いい“めっけもん”なはず・・・」の気持ちから由来され、ファーマーズマーケットの愛称とされたそうです。商品の在庫状況確認には、POSシステムを採用しており、自分で出した野菜がどれくらい売れたかを電話ですぐ確認でき、在庫が足らなそうなら補充をしに、多く残りすぎたなら回収をしにと、素早く対応することができる体制になっているとのことでした。品物を置くスペースは、野菜ごとにある程度範囲が決まっているのですが、そのなかで、誰がどこに置くといったことは決まっていないので組合の方がそれぞれ場所を決めて自由に行っているそうです。

また、出荷する品も、この部ではこの規格で出すと決まっていたり、この部では規格外は出してはいけないとなっていたり、この部では個人名で出していいことになっていたり、個人名でなく、部の名前でないといけなかったり、とそれぞれの下部組織により規定が決まっているのですが、全体でみるとそれぞれ異なることが分かりました。

 

先ほどの話になりますが、置くスペースが大体決まっていても、売れる場所、売れない場所というものが存在するらしく、年末年始の売れる時期になると朝早くから並んで場所取りをすることを考えるかたもいる様です。また、こちらの写真で見てもわかるように、手作りのポップが沢山あり、店内はとても賑やかでした。

 

農事組合法人 遊農(伊都郡かつらぎ町)

観光地である高野山へ通じる国道480号線沿いにある立地を活かして、直売店(こんにゃくの里)と、 農家レストラン(こんにゃく工房)の2店舗で新鮮な農産物や加工品の直売を行っています。少量多品目化に対応しており、1つの作物に対して約50通り以上のアレンジ方法を考え商品開発をしているとのことでした。農家レストラン(こんにゃく工房)は、1階がこんにゃく・ジャム等を加工する農畜産物処理加工施設、2階が事務所兼資材倉庫、3階が地元農産物・農産加工品の直売所と地元食材を使ったレストランとなっているようです。
こんにゃくを初め、地元産を積極的に利用しており、ジャムについては、従来廃棄されていたイチジクやリンゴの規格外品を原料としています。最近では、メタボ解消!と謳われている、酸味の効いたオムライス専用のトマトソースが人気とのことでした。

また、野菜や果樹等にあたっては、会員農家約400名が直接持ち込んだ物を販売しています。こちらもPOSシステムを導入しているため、販売状況が即座に把握可能となっています。やはりPOSシステムは便利なのでしょうか。
こちらの企業では、平成12年度に農林水産省・県・町の協力により「アグリベンチャー支援事業」の実施指定を受け、農家レストラン経営に取り組むことができ、レストラン、直売店、加工場等を配置して、生産・加工・販売等一貫した効率経営に取り組んでいるとのことでした。

 

農事組合法人 あら川第一桃生産組合(紀の川市)

モモの特産地で、個々の組合員が生産した桃の共同選果、共同販売を行っています。また、こちらの組合は「あらかわの桃」のブランドで知られる古くからのモモの産地であり、地区の生産農家で、任意組織として共同出荷・販売活動を行っていたのですが、
施設の改善等を実施するために、農事組合法人の設立を検討し、平成15年4月1日に農事組合法人(1号法人)として発足したという経緯があります。年間の取扱量が300~400t、販売額にすると2億6千万円余りだそうです。なお、直売所が2ヶ所あり、こちらの販売額は約1億円だそうです。
出荷先としては、大阪・広島・京都を主としています。経営規模は50a~1.5haです。モモの出荷はこれからがピークですので、これからどんどん忙しくなるとのことでした。直売所では、桃の特選品コーナーに、贈答用に是非どうぞ!とあり、とてもあまくていい匂いに誘われ、購入してしまいました。
帰って冷やして食べたのですが、とっても甘くておいしかったです。地元のスーパーで買うのとは、やはり違いますね!郵送料無料とのことですので皆さん購入されてはいかがでしょうか。

 

 

株式会社 早和果樹園(有田市)

ミカンの生産・加工・販売に取り組み、農業クラウドなどICTの導入も行っています。農業の6次産業化による地域活性化へも挑戦しています。また、特産の有田みかんに付加価値をつけるために、加工してジュースを搾っています。有田みかんは、糖度12度以上の特別美味しいみかんです。
搾り方は世界でも珍しい、皮をむいて薄皮ごと搾る「チョッパー・パルパー方式」です。ジュース以外にも、有田みかんのジャム「黄金ジャム」や、91%果汁のゼリー「味一ジュレ」、「味一ジュレてまりイン」、「てまりみかん」、有田みかんのポン酢「みかポン」などがあります。「てまりみかん」は、プレミア和歌山特別賞を受賞しました。
また、ブランド化商標登録を行い、自社商品を守っています。今までに商標登録された商品は、「味一しぼり」「味まろしぼり」「てまりみかん」「早和果樹園」「みかポン」「飲むみかん」です。販路開拓としては、和歌山県のアンテナショップ・東京有楽町東京ビックサイト「アグリフードEXPO」・幕張メッセ「FOOD商談会」
・近鉄百貨店での催事・伊勢神社「おかげ横丁」試飲試食販売など。また、方々で早和果樹園ブランドの確立が広がりを見せています。東京の有名各百貨店・高級スーパーへの卸、テレビ、新聞などメディアへの露出、香港・シンガポール・台湾・オランダ・ベルギーなどへの海外展開もしています。早和果樹園のファンづくり、ということも行っており、お客様との結びつきをとても大切にしています。例えば顧客リストを元に、年3回のダイレクトメール、お中元、お歳暮、「味一通信」を郵送したり、アグリファンクラブというのを自社で開催し、
収穫・選果・農業体験を行ったり、バーベキューや、光センサー選果体験、ゲーム、もち投げを行ったりと、コミュニケーションをとることをとても大事にしています。また、富士通と共同でみかん栽培に「クラウド」コンピューティングを利用し、実証実験を行っています。自社の勘と経験、気象、栽培マニュアル、を膨大なデータとして取り込み、
美味しいみかん作りのシステム農業へ移行しています。早和果樹園・県果樹試験場・富士通の一体的取り組みで、ICTを活用した営農支援サイクルの実証と地域活性化へのモデルづくりを目指しているそうです。これにより、「勘と経験、どんぶり勘定」の農業から「データ・精密」みかん栽培へと変わっていく期待ができるとのことでした。

 

  

 

有限会社 農園紀の国(御坊市)

施設栽培による花き・イチゴ・メロン・ミニトマト等の生産とJAを通じた販売及びこれらの収穫体験・直売所による農産物の販売、イチゴ狩りやメロン狩りなどの観光農業に取り組んでいます。こちらの地域は黒潮の暖流の影響による温暖な気候を活用して古くから野菜(豆類)や花き(特にスターチス)などの栽培が盛んな地域であり、また、白浜温泉という観光地を控えていることから、施設栽培によるイチゴ・花き・メロン等の収穫体験を主とした観光農業に取り組み好評を得ているとのことです。

最近では、外国人観光客が増え、観光客に施設説明をするのが大変だとお話していました。勝手に倉庫の方へ入って行ってしまったり、イチゴのへたを専用の入れ物に入れずに地べたへ捨ててしまったり・・・。 今では雇用人の中で外国語を話せる方がいるので割と理解していただけるようになったとのことです。大人の入場料1,500円ですが、メロンの1個の販売単価を見てみると1,800円と、格安で行っていることが分かります。研修の際にメロンとスイカを試食させていただきましたが、どちらもとても甘くて美味しかったです。メロン狩りでは、“大食い大会”を開いたりもしているので面白いと思いました。

 

産直市場よってって いなり店(田辺市)

今回ご案内頂いた野田正史先生が経営なさっている、民間企業が多店舗展開する農産物直売所の1号店。今では支店数が12店舗と、県内外手広く行っています。当初は、出荷農産物も不足するなど苦戦をされたのですが、少しずつ生産者・消費者ともに認知が進み、社会ニーズに対応して県内外に店舗を少しずつ増やし、店舗間の産物交流で農家収入の増大と地域活性化に取り組んでいるようです。こちらでもPOSシステムを採用しており、販売状況が即座に把握可能です。また1日4回のメール配信も行っているそうです。店内には野菜はもちろんのこと、自分で加工した食品や、お総菜、ジャム、手作り雑貨など多くの商品が置いてありました。また、自社で作られたイメージソングが流れていました。音楽ひとつでお店の雰囲気がとても明るく変わることを実感することができました。11年前には、売場面積100坪を超える中・大型の農産物直売所はまだ少なく、生産者も半信半疑で出荷登録してくれるという状況からスタートしたそうです。その後、安心・安全な食を求める消費者の増加、地産地消の意識の高まりという社会情勢を背景に、客数、生産者数ともに少しずつ増加し、安定的な運営ができるようになってきたとのことでした。しかし、現在では、直売所も増加し、一説には農産物直売所は
全国に16,000ヶ所、売上合計は8,000億円に達したとも言われています。また、多くのスーパーマーケットが店内に産直コーナーを設置し、百貨店やネットショップなどでも産直農水産物の販売が一般化しており、競争の激化が進んできているようです。

 

秋津野ガルデン(田辺市)

地域資源を活用した体験交流型グリーンツーリズム施設です。ソーシャルビジネスの取り組みとして、利益を追求するビジネスではなく、地域の発展、地域の課題解決が目的で行っており、効果としては、付加価値創造、雇用創出、交流人口の増大、農業振興、コミュニティ拡充などがあるとのことです。具体的な活動としては、地域経済活動と地域づくりへの挑戦として地域資源活用型の秋津野直売所「きてら」や、地産地消の実践場・地域女性の雇用の場・農村との出会いの場として農家レストラン「みかん畑」、長期滞在を視野に入れた和室4人部屋6室・和室8人部屋1室ある「農」のある宿舎、地域と一緒になり教育旅行等の受け入れを行う農家民泊、農業体験、新しいみかん流通への模索としてみかんの樹オーナー制度、廃園を復活し地域ビジネスへ利用する遊休農地の有効活用、廃園を復活させた野菜園や市民農園で野菜作りの実践・かんきつ経営の先進農家への派遣で果樹栽培の実践・看護の援農事業化への模索として新規就農者育成などがあります。元は廃校だったのですが、それを買取り、この事業を始めたとのことでした。廃校を上手く活用し、地域と行政とのバランスをとり、事業を行っています。懐かしい学校の雰囲気に、皆さん童心にかえったようでした。とても貴重な体験ができました。

 

中田食品 株式会社(田辺市)

日本一の梅の産地で、梅干加工販売の最大手です。梅の一粒ひとつぶに心を込めた梅干造りと、原料にこだわった梅酒作りをしています。今回は説明を受けながら、工場見学をさせていただきました。従来の梅酒は青梅を使用しているため、梅の酸味を引き出すのに糖分を多く使用してきたのですが、NAKATAの梅酒には青梅ではなく、完熟した南高梅だけを厳選し、酸味のバランスもフルーティーな風味も引き立てながら糖分を控えて漬け込み、厳しい品質管理の下で製品化されていました。梅回廊という場所があり、梅の味付け、製造ラインを見ることが出来ました。職員の方の説明がとても上手でした。声がハキハキしていたり、身ぶり手ぶりで大きく表現していたりで、耳で聞いても、目で見ても楽しく、分かりやすく説明を受けることが出来ました。カップ詰めの作業では、中国産のものはスコップのようなシャベルですくい、詰めていましたが、日本産のものは、手で丁寧に取り分けながら詰めていました。
また、梅の生産は契約農家が約20件おり、原料の品質向上のため、生産団体を結成し、収穫・漬け込み・天日干し工程までにわたって改良を重ねることによりさらなる品質の向上に努めているとのことでした。
お土産屋さんでは、各品種の梅干の試食、梅酒の試飲ができ、販売員の方が丁寧に説明してくださりながら、味を確かめることが出来ました。自分の好みに合った梅干、梅酒を見つけることができました。

 

視察研修は2泊3日で、最終日の3目は観光をしました。

千畳敷

新第三紀層の砂岩からなる、太平洋に面したスロープ状の岩場で、砂岩は非常に柔らかいため、打ち寄せる波の浸食を受け、複雑な地形をしていました。地べたを触ってみると確かに柔らかく、落書きがしてあるのが目立ちました。岩場を散策し、海岸近くまで行けて、群馬には無い海を堪能することが出来ました。天気が曇りだったのですが、時折日差しが差し込んでいて、美しい海の青を見ることができ感動しました。

 

三段壁・三段壁洞窟

 

千畳敷の南海岸にそそり立つ高さ50mの断崖です。その昔、漁師たちが通りゆく船や魚の群れを見はった場所「見壇」に由来するといわれるこの大岩壁は、南北2kmにわたって展開され、岩肌に打ち寄せる黒潮が激しくぶつかり合うダイナミックな光景を見ることが出来ます。自然の迫力を感じずに居られません。また、自殺の名所であるとかないとか・・・。
三段壁洞窟へ行くには、高速エレベータを使います。この高速エレベータは、地底36メートルの洞窟まで約24秒で行くことができます。ビルの階数で表すと12、13階建てに相当する高さだそうです。洞窟内には、牟婁大辯財天や、熊野水軍番所小屋があります。また、洞窟の最深部では、砕ける波を見ることが出来ます。
太平洋から押し寄せてきた波が洞窟内部に入るにつれその高さと勢いを増し最深部のここで砕け散ります。訪れた日は、台風が過ぎ去ったあとで波が高かったので、より威力が増しており、大迫力でした。

 

とれとれ市場 南紀白浜

 

漁業協同組合(堅田漁業協同組合)が運営する和歌山県白浜町の海鮮マーケットです。西日本最大級!総敷地面積15,000坪、バス70台・普通車777台を誇る駐車場を完備し、日本全国の四季折々の魚貝類や、和歌山の色とりどりの特産品を販売しています。マグロコーナーでは、一度も凍らせていない近海物の生マグロをその場で切売り販売を行っています。
丁度切り売り販売を行っているところを見ることができたのですが、周りには人だかりができており、覗き込むのがやっとでした。とても人気であることを体験することが出来ました。
フードコーナーの「とれとれ横丁」では、新鮮な魚介類を使用した丼(海鮮丼・まぐろ丼・いくら丼・うに丼)や、麺類・お造り・惣菜・お寿司・海鮮焼(イカ焼き・ホタテ・さざえ・えび・かに)などを味わうことができます。昼食は自由食でしたので、こちらで海鮮焼とお寿司を頂きました。とってもおいしかったです。

 

帰りのバスで気が付いたのですが、カメラをどこかに置いてきてしまいました。もしかしたら、とれとれ市場で買い物をしたり昼食をとったりした際、時間があまりなかったので、どこかに置き忘れてきてしまったのかと思い、後日落し物のお問い合わせをしたのですが、すぐに対応してくださいまして、郵送でカメラを届けてくださいました。
とても親切に対応してくださり、助かりました。ありがとうございました。

以上、和歌山現地視察のご紹介でした。視察したどの企業も特色があり、とても勉強になりました。観光もできたので大満足です。今後我が事務所でもより一層農業との関わりを深められるよう、日々努めていこう、と改めて思いました。本当にありがとうございました。
来年の研修は岐阜県とのことですので、また新たな出会いがあることを楽しみにしています。

 

最後に、今和歌山放送で盛んに言われている短歌を、バスの中で教えていただきましたので、ご紹介します。

 

「和歌山や 残したしこの 山や川 = わかやまや のこしたしこの やまやかわ」
上から読んでも、下から読んでも同じの回文です。故郷にこんな素晴らしい回文があると、なんだか嬉しくなりますね。

 

H25.7.11~13 高坂 桃代