会社法について

事業に柔軟な社会へ

I. 個人保証の裏付けは土地でした。
今までも、合名・合資会社を除き主流は株式会社や有限会社で何れも有限責任会社でした。しかし、それは名目にすぎず、融資には必ず個人保証を必要としました。この個人保証の裏付けは土地でしたが前述の通り土地は担保機能を失い、個人保証を取っても仕方がなくなりました。本当の意味での有限責任会社の出現です。
II. 銀行を査定するには
なお今後も、個人保証や土地担保にこだわる銀行は未だ従来の土地本位制と揶揄された土地担保主義から一歩も前に進んでいないことを示しています。こんな銀行は早晩潰れるでしょう。こんな銀行の預金も保証は一千万円までですから早めに資金を引き上げましょう。
III. 有限責任のコスト その1
今までは、有限責任制度は無かったに等しく、従って、これのコストもありませんでした。今後与信の手懸りは既に述べた「信頼性を向上させた決算書」になりますから、これを作成するためには、コストがかかります。有限責任は社会から会社が与えられた特権です。当然、この特権を維持するための費用が掛かります。「会計参与への報酬」「計算書類(財務諸表)の開示の公告料」といったコストです。このコストを掛けることにより、初めて有限責任制度が機能し、やり直しの利く柔軟な社会が作られるのです。
IV. 有限責任のコスト その2
自由経済システムの下では企業は一定割合で破綻し、効率の悪くなった企業は整理されていきます。事業は経営不振や、見込み違いからの破綻は当然生じます。そして、世の中で必要なくなった企業は市場から退場して行き資源分配の効率のよい社会が形成されます。銀行でも企業でも当然一定割合でこのような破綻企業に遭遇し、不良債権が生じ、やがて貸倒損失として処理されます。どの企業でも貸倒損失のコストを見込んで収益を確保し経営を成り立たせています。これが、有限責任を社会が許容する根源になっています。
V. 財務諸表への不実記載は即刻市場からの退場となり再起不能となります。
今まで、飾りにすぎなかった計算書類(財務諸表)は本格的に機能し始めます。最近の事件で明らかなように、財務諸表への不実記載が発覚したとき、制裁はこの経営者の再起を許さないという形でなされます。もっともそれ以前に刑事罰も用意されていますけれども。
VI. 有限責任制度の徹底化
有限責任制度が徹底化されることにより、事業に失敗しても責任の範囲が限られるので、再び事業を行うことが出来る柔軟な社会となります。

日本の社会は、今までもそうでしたが、いったんその流れが出来ると、全体を巻き込み一つの方向へ向かっていきます。そして、その変革について行けなくなったとき、企業はその役割を終えるのです。今回の改正を機に、新たな方向性へ向かうべく、しっかりと自社や事業を見つめ直し、変革の流れについていきたいものです。その一助に当会計事務所がなれれば幸いです。